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<評>

 投稿者:審査委員長  投稿日:2004年 4月27日(火)09時16分50秒
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  > あなたの経験活かせます(by:オルポゴ No.1794)

伝説の句「ひぐちーみてるー!?(No.138)」の作者オルポゴ氏による2度目の泰平賞受賞句。第4回泰平賞当時の論評を読み返すといくつか共通点があることに気付く。内容が鑑賞者に向けられたメッセージ風である点、空虚感が漂う常套句を扱っている点などがそうだ。やはり人それぞれ得意ゾーンというものがあるのだろうか。ふむふむ。重なっている部分は第4回泰平賞当時の論評を参照していただくとして、今回はそれら以外の部分を論じてみる。

「あなたの経験活かせます」これはアルバイトや就職情報誌なんかでよく目にするキャッチフレーズだ。しかしよく考えると無責任な文だ。調べたらこの惹句、SEだの、薬剤師だのの求人広告に使われているではないか。もし僕が「あなたの経験活かせます」をいいように解釈して薬剤師の就職面接に行ったとしたらギャグだ。「僕は大学で絵の具を調合してました。僕の経験活かして下さい」なんつって。それは大袈裟だとしても「何の」経験を活かせるのか書いていないのは、なんとも紛らわしい。…というのは余談で、普通の人の場合、それが例えば薬剤師の求人だとしたら、自分の「薬にまつわる経験」を活かせる職なのだと解釈するだろう。「何の」経験を活かすかは言葉足らずだが、「何に」活かすかは明々白々だからだ。しかし、これがネオ自由律として投句されたとなると話は別だ。この句の場合、「何の」経験を活かすかはおろか、肝心な、「何に」その経験を活かすかも不明なのである。それゆえ「あなた」と指された鑑賞者は「私の何の経験を何に活かせば良いのだろう?」と頭を抱えるのだ。

「何に」を想定してみる。
■ あなたの経験(ネオ自由律に)活かせます
…もし、これが「天下泰平プロジェクトの参加者募集惹句」だとしたら「あなたの経験活かせます」というフレーズは適切かもしれない。実際、ネオ自由律には「薬にまつわる経験」だろうが、「絵の具を調合してきた経験」だろうが、それぞれの経験を活かしていただきたいからである。しかしこの場合も(ニアミスなので少し紛らわしいが)「何に」が句の外部にあるため、薬剤師の求人広告同様「言葉足らず」感が歪めなくなる。本当に参加者を惹き付けたいのであるなら「あなたの経験ネオ自由律に活かせます」と しないと伝わらないだろう。ので、これが「プロジェクトの参加者募集惹句」だとの見方は違うような気がするのだ。…とするとこれか↓
■ あなたの経験(この句の読み取りに)活かせます
…天下泰平プロジェクトにおいて良しとされている句は「受け手の自由な解釈を喚起するもの」である。逆に言うと、その句を題材にああだこうだ侃々諤々するのがネオ自由律の正式な楽しみ方だ。オルポゴ氏は、このような「ネオ自由律鑑賞法」を題材にネオ自由律を詠んだのだろうか。「あなたの経験活かせます」というネオ自由律を読み取ること自体に「あなたの経験を活かせます」という具合に。だとしたらしっくりくるではないか。こっちが正解か。様々な解釈を受け入れる鑑賞法を題材に句を詠んだ、という解釈が皮肉にも限定的なのは、まぁ良しとしよう。この句における「何に」は「この句の読み取りに」だと とらえるのが良さそうだ。

ところで、僕は「人は文章を読んでも、既に理解しているものしか理解出来ないものだ」と感じている。「バカの壁」という本を幾ら熟読しても、その人に「バカの壁」があったら、それを越えることは出来ないだろうと。「バカの壁」は、それを経験し、越えたものにしか理解出来ないからである。ちなみに「バカの壁」を越えている人にとってはそんな本に意味はなく、読んだとしても「そうだそうだ」と共感するだけで終わるのがオチだろう。とてもぐるぐるしているが、文章には、哀しきかなそんな性質があると思う。文章を読むというのは「自分の経験を活かす行為」であり、それ以上のものではないのだろう。…と、そんな事をうだうだ考える経験をした僕は「あなたの経験活かせます」を読み取るにあたって、そんな経験を活かしたりした。
お詫び:すみません。「バカの壁」読んだ事ないのにタイトルの印象で話してしまいました。
 

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